その日は息子がセンター試験だった。そんな日に親父が山で遊んでいていいものか。後ろめたい気持ちもあったが、いつもと変わらぬ平常心で週末を送ったほうが息子の上がり症にもいいように思ったし、厳冬の笹谷から山形神室を目指すことは遊びというよりは私にとっては挑戦だった。 その日が終わって車の中で息子の話を聞いた。何とか明日に繋がる手ごたえのようだった。私は3度の挑戦でついに1月の山形神室の山頂に立てたと言うと、おーと感心してくれた。しかし、それは天候と雪の状態に恵まれたからに過ぎない。 歩き始めると通行止めのシャッターを迂回するように雪は踏み固められて小道ができていた。その小道は笹谷峠まで途切れることはなくワカンがなくても歩けそうだ。木漏れ日が雪原に純白の帯を描いて見せた。青空を突き抜けるように大関山の三角の頂きが輝いて見えた。 振り向くと駐車場でお会いした方の姿が見えた。快適に登って来られて笹谷峠で一緒になった。大関山の鞍部までとおっしゃっていた。私は山形神室までというと途中まで後について来られた。大関山は木が雪で隠れ雪崩の起きそうな斜面だった。ワカンで直登したがスノーシューの彼は斜めに登っていた。高度を上げると雪が締まってきてワカンでも斜めに登れるようになったのでハマグリ山のあるほうに進路を変えた。いつの間にか彼の姿は遠くなり息が切れた。一息つくと笹谷峠の鉄塔が白く光って見えた。 鞍部まで登り詰めると先行のスノーシューは尾根の北側に回り込むように見えた。私は尾根の中央を忠実に登ると先行の後ろ姿が僅かに見えている。積雪は僅かで風が強いのがわかる。ザックを下ろして目だし帽とネックウォーマーを出してその上にモンベルの耳付き帽子を被り、最後に雨具の帽子をして上からゴーグルで風に飛ばないようにした。顔の周りを重装備すると上半身は雨具を入れて3枚でも寒くはない。逆に汗をかかないので快適だった。 歩きだすと彼はもう戻って来ていた。天気がいい時にまた来ますといって別れて行った。明るくて礼儀正しい感じのいい方だった。去年はここまででガスのために折り返しハマグリ山の頂標を拝めなかった。今日は雲が厚いが風もほどほどでガスがない。雪の状態もワカンが隠れるほどで歩き易い。それにトレースも僅かに残っているので山形神室まで行けるところまで歩いてみることにした。ハマグリ山の頂標も応援してくれているようだった。 ハマグリ山の急坂を少し下ったところで右のワカンの爪が緩んでそっぽを向いてしまった。左の方は針金で修理していたのだが5年目にして限界だろうか。右の片方の爪は使えそうなのでそのまま進んだ。右側は雪庇になっていてなるべく避けて歩いた。トンガリ山の最後の登りはクラスト気味でストックの先端のゴムを外して滑落しないように確保しながら登った。 トンガリ山からは平坦な雪原が山形側に傾斜していて初めて目にする巨大なスノーモンスターや雪上を這うように並ぶエビの尻尾に驚かされた。もうすぐ山形神室頂上だ。僅かにトレースが残っているように見えたが尾根は穏やかで時々踏みぬいたがストックに助けられた。 山頂の頂標は文字盤だけが顔をだしてどっぷりと雪に浸かっていた。小東岳が雲間からの冬の日光に照らされてスポットライトを浴びているようだった。頂標傍で昼食にした。厳冬の期に山頂に立てた満足感に包まれて雑炊を啜った。寒風が吹き出し帰路を急ぐことにした。自分のトレースを忠実に辿ると一瞬の光が雪原に差し込む。未体験の雪の稜線歩きを終えるとペットボトルの水はすべて氷りになっていた。 関沢インタ−脇駐車場(10:07)−笹谷峠(11:02)ー山形神室(13:31−13:50)− 笹谷峠(15:33)−関沢インタ−脇駐車場(16:11) 山形神室 1344m 往路 3時間24分 復路 2時間21分 移動距離 9.5km 総上昇量 968 m |
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冬の神室も行ってみたいですね〜 |
トシヒコ 2014/02/14 10:45 |
トシヒコさん、こんばんは。 |
HITOIKI 2014/02/14 20:59 |
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