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zoom RSS 丸森尾根から杁差岳(平成26年7月12日)

<<   作成日時 : 2014/07/13 12:04   >>

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 満ちた月が山裾に沈むと辺りは漆黒の闇になった。丸森の登山口を探すためにうろうろしたが見つからず、車で来た道を少し戻ると見覚えのある道標があった。ヘッドライトを点けて3時55分にすぐに尾根に取りつく。風はなく、夜明け前の尾根はもはや生温かく感じた。ぐんぐん高度を上げるのと歩調を合わせるように空は蒼みを帯びてきてヘッドライトを仕舞った。右手には杁差岳が遥か彼方に見えた。今日は何処まで登ろうか。山の天気と己の体調が教えてくれるだろう。
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 振り返ると山裾が薄赤く染まり出し、少し離れた雲の東側がピンクに色付く。一日の始まりを尾根で迎え、好天に胸が膨らむ。去年は追われるように急坂を登りペースを乱し、門内で足が攣った。急がす休まず歩幅を狭く確実に土をつかむ。塩分と水分を小まめに取って呼吸が乱れないように心掛ける。前方の小枝が赤く染まり、顔を出した朝日が麓の山並みのシルエットにグラデーションを加える。
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 以前は時間を惜しむように先を急いでいた。それはより速く登頂したいとのコースタイムとの戦いのようだった。このことは気になっていて物理的な登り方はやめようと思っていたがなかなか思うようにならなかった。そんな登りをやめるには目標を持たない、行けるところまでで引き返すこころのゆとりがほしい。ただ頂きを目指せ、が私の山の哲学だが雄大な飯豊連峰はどの稜線も頂きだった。それで3度目にして初めて夫婦清水に寄った。手元には水は2リットル以上はあるし頼母木小屋には溢れるくらいの水が手に入るが。水場は分岐から10mあまりだった。水場の上方には雪渓があった。タオルを絞って頭に巻いた。丸森山までは樹林のトンネルの中を歩くようで時々その枝の間から雪形を見た。地神山の頂上は西からの雲が走り青空は望めない。新しい踏み跡はなく静かというよりは寂しい登りが続く。そんな時は花が慰めてくれるのだがそれもまだ現われない。主稜線の展望を思い描いて高度を上げた。
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 丸森山を越えると曇って来た。雪渓の上を歩くと肌寒く感じた。一つ目の雪渓の向こうには夏道が確認できたが、二つ目は迷った。夏道のように見えたのは藪を分ける裂け目ですぐに行きどまりになった。ここは左側に巻くように歩くはずだったが雪に隠れて右往左往した。GPSを出してやはり左側だと確信して雪渓の上方のまだ氷結している土の面を巻いて行くと見覚えのある岩に出会った。去年の10月はここは新雪に被われていたが降り積もった雪の下にルートは確認できた。岩の向こうはガレ場で雪解け水が気持ちいい。チングルマ、コイワカガミ、アオノツガザクラが咲き出していた。もうすぐ地神北峰だ。寒くなってきたのでフリースを着た。麓の予報は30度を越えていたが持って来てよかった。
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 地神北峰には立ち止まらず頼母木小屋を目指す。稜線を下ると西風が強い。ダイモンジソウ、オノエランも風に揺れている。雨粒が落ちて来た。雨具を着るか迷ったが暫し様子を見ることにした。ヒメサユリの花びらが萎れかかって水を含んだところが透けて見えそうだ。頼母木山頂手前でY字分岐の左方向に進むと踏み跡もあやしくなった。戻って右に進むが西俣ノ峰に迷いこまないか心配した。頂標付近はガスで秋の登頂を思い出させた。ここまで誰にも会わず孤独を噛みしめた。
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 頼母木小屋で管理人さんに声をかけた。別に用事はなかったが、人の声を聞きたかった。休んでいったらと誘われたが帰りにお邪魔しますと話して大石山まで歩くことにする。雨は上がったが風はまだ強い。ここで今日初めての登山者とスライドする。雨具を着込んでかなりの速足だった。緩い下り坂で体が軽くなった。歩き始めて5時間になってやっとエンジンがかかったという按配か。これなら杁差岳まで行ってみよう。11時を折り返し限界と決めた。日没前に戻れるだろう。ニッコウキスゲの黄色が霧の中から顔を出す。大石山から下る。鞍部からは鉾立山の急登だ。あえてストックをしまって歩幅を狭くした。これから杁差小屋に泊まる胎内からの男の方が休んで居られた。黄色の大きなザックカバーをした単独の女性の方もパスした。後から杁差岳山頂でお会いし意気投合したMさんからの情報では杁差小屋を管理されているボランティアの方のようだった。ミヤマクルマバナを腰を下ろしてカメラにおさめた。
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 立ち上がると太ももが痛かった。杁差岳山頂はガスの中で2週前に歩いた道を忠実に登る。ふと左を見るとセンジュガンピの純白の花が一輪咲いていた。一度出会いたかった花だったので嬉しかった。
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 ポツンと杁差小屋が現われた。大熊尾根への分岐は2週前より藪に被われていた。杁差岳山頂を見上げると帽子の紐を結び直すシルエットが見えた。Mさんの登壇だ。彼とは帰りの地神北峰まで御一緒して頂いた。胎内から乗り合いタクシーを待たずに歩き始めたと。山頂で写真を取り合った。ここまで6時間経っていた。Mさんは小屋に入って行かれて私は帰路に着いたが大石山を過ぎた所で再会出来た。まだ早かったので予定を変更して頼母木小屋に泊まることにしたとのことだった。鉾立山を越えると急に明るくなった。頼母木山までの稜線に雲が流れて行くのがわかる。地神山の山頂はまだ雲に隠れている。午後から天候が回復するとの頼母木小屋の管理人さんのアドバイスを聞いてここまで足を伸ばして良かった。思わずヤッホーと叫んでみた。少し下って朝食とも午前のおやつともつかないクリームパンを食べた。フリースはお役御免で、頼母木小屋まで12時30分に着けばよい。待ちに待った抜けるような空の下での飯豊主稜線歩きの始まりだ。
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 大石山では二人が食事を取っていた。少し過ぎると咲き始めたヒメサユリが濃いピンク色をして蜂達のお世話になっていた。朝日連峰ユーフンで見かけたヒメサユリが懐かしい。ニッコウキスゲの赤とヒメサユリのピンクを一緒に楽しめる飯豊朝日に感謝。ヒメサユリを従えた杁差岳の山容が気にいった。C字に曲がった主稜線から見れば杁差は以東岳が朝日連峰の名峰である如く、どっしりと飯豊連峰の北の峰主なのだと気づいた。ヨツバシオガマが群生していた。Mさんからあとで今年は当り年を伺った。今度はニッコウキスゲが山裾を飾る頼母木山を堪能していると、後ろからMさんが再登場した。杁差小屋で休んで来られたと言うがあっと言う間に追い付かれた。健脚だ。
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 頼母木小屋の管理人さんに帰還を報告した。最初は大石山までと言っていたので生還が遅れて心配していると悪いと思った。凍らせたペットボトルで冷やしたノンアルコールビールにチーズ入りパンを頂く。Mさんはザックをデポして散策に。私も冷たい水を頂いて出発。塩トマト納豆を取り出して帰りの友をした。あっと言う間にMさんは稜線の向こうに。振り返ると飯豊の北の主稜線が眼下に見えた。頼母木山でMさんは待っていてくれた。笹の葉に隠れるイイデリンドウを見つけて私に教えてくれた。ありがとう。風が強くなかなか美味くフィルムに納まらない。さらに進むとキキョウが一輪咲いているのをまた教えて頂いた。以前、飯豊の御秘所で見かけたイワギキョウと思ったがこれはチシマギキョウかもしれない。再会が楽しみだ。
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 地神北峰までは緩い登りが続く。10月は草紅葉に新雪が薄く積もり寂寞とした平原だった。日差しのもとでは草原が広がりたよやかな飯豊の良さが感じられた。Mさんに咲き終えたハクサンイチゲを教えて頂く。この花の草原に会うには雪の丸森を越えるか、胎内から歩かなければならないのだろう。まさしく桃源郷だ。地神北峰でMさんはまた待ってくれた。人それぞれの歩調がある。それに合わせるのではなく進んでは立ち止まる、そんな繰り返しが楽しい。地神北峰から地神山まで、そこはお花畑が続くだろう。飯豊本山が梶川尾根の向こうに横たわる。主稜線は扇ノ地神までしか望めない。丸森はガスが消えてはっきりと夏道が帰路の安全を教えている。Mさんから石転び沢に登ってみたらとアドバイスと頂いた。私は危ない所は避けているんですと答えたが、7月初めならばどうかとそそられる返事が帰ってきた。そういえば北股岳から本山までは未踏だ。ハクサンコザクラにも会いたい。主稜線を南下してまた石転び沢を下れれば楽しそうだ。
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 Mさんとの山談義が続く。危ない山には登らないとの話から私が未踏の麻耶山と沢渡黒伏の山行の話になった。麻耶山は越沢から沢筋を避けれれば危険個所も少ないとのこと。沢渡黒伏はザイルを持って登ったがそれも必要なかったと。白森に抜ける藪漕ぎも途中までは踏み跡もあるという。人身事故があるコースは知ってしまうと二の足を踏むが、経験者のアドバイスがあれば食指をそそられる。Mさんと別れて丸森へ。梶川尾根の雪形は飯豊を象徴しているようだ。ガレ場と過ぎて夏道を歩くと雪渓が梶川尾根と丸森尾根の間の沢を下る。滑落したら登り返すしかない。あいにくアイゼンは車の中だ。左側の夏道まで雪に隠れた夏道を避けてトラバースするが転んでストックが曲がった。足下には芽吹き出した緑が雪解けを待って顔を出していた。
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 雪渓からさらに上方に登り慎重に夏道目指した。下方の雪渓はその上を歩くしかないがあまり左に寄らなければ谷に下ることもないだろう。夏道に着いて気が緩んだのか体が暑くなった。頭を冷やそうと雪解け水が溜まった水たまりにタオルを浸して頭に巻いた。2時を過ぎていた。塩トマト納豆と水を取ったからかいつもはそろそろ痛くなる腰も快調だった。夫婦清水で頭を冷やした。荷が重くならないように水は予備と合わせて1リットルとした。なんとか5時には麓には着けそうだったので尾根に戻って女房にメールした。登山口では携帯は通じない。
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 丸森尾根は何か所か下るときに迷いやすい個所がある。登りでは気づかないがY字に分岐しルートはトラバース
しているが、そのまま下る坂を下りたくなる。10月に下った時は迷わなかったが今回は3か所くらいハッとした。こんなことは私のブログの本意ではないが、もしかしたらこの記事を読んで同じ山行を辿る人がでるかもしれない。10月に迷わなかったのは偶然かもしれないがあの時は雨で自分の足跡が残っていたのであろうか。もう記憶も定かではない。どうぞ、こんな記事は単なるお楽しみに留めてほしい。モミジカラマツが傾いた日を映している。最後の登り坂は果てしなく続いた下りから逃れられてかえって気楽だった。急な岩場は後ろ向きで下った。つんのめったことがあったが転ぶこともなくちょうど5時に下山した。飯豊温泉で汗を流した。隅々まで綺麗で休憩所も無料だった。また丸森を歩きたい(完)。
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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
いい意味で、いろいろ考えさせられる記録です。

それにしても早起きですね!
cheeze
2014/07/13 16:27
cheezeさん、こんにちは。
待ちに待った?、コメント嬉しいです(笑い)。
まだ途中の記録にコメント頂き、もう一度感謝。
実は昨日の山行は大日杉から飯豊本山のピストンよりロングコースでした。最初は頼母木小屋か大石岳までと思って歩いていましたが、体調が良くなるのが実感できました。それに杁差岳までの登りが暑くならなかったのも良かったです。ただ頂きを目指せはやはり大事だと思います。そうでないと気力がわかず山からこころ離れてしまうような恐怖があります。なかなか難しい問題です。その日は8時過ぎに寝て女房が寝る前には目が覚めました。月光の下でのドライブも楽しい思い出です。これからもよろしくお願い申し上げます(記事は続きます)。
HITOIKI
2014/07/13 17:14
センジュガンピは私も好きですよ。ハッと息を飲むような白さがイイですね。
このところ天気が噛み合わずに、ようやく7月初出動しました。夏山シーズン本格化しますね♪
まこ☆にい
2014/07/19 23:33
まこ☆にいさん、こんばんは。
東北も連休は雨です。それで未踏の安達太良山に登って来ましたが、やっぱりずっとガスでした。麓の渓流散策が良かったです。
HITOIKI
2014/07/20 19:59

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