予想通り天童高原の登山口にはトレースはなかった。期待した通りだ。東北地方は日本海側を中心に大雪の予想で、地域別の天気予報を調べると二本松はいいようだった。さすれば安達太良山は好天かもしれない。そこでネットで過去のヤマレコと読んでいると興味がなくなった。人が多すぎる。そこで北面白山に向かうことにした。午後から天気は好天することを期待して遅い出発。歩き出したのは9時30分頃か。ゲレンデには吹雪の中をスキーヤーがわずかにいた。子供もいて元気そうだ。夏道はただの斜面になっていた。尾根を歩く。大畑山は雲の中。それでも小杉の頭が雪から覗く。12月に登った時よりは雪は締まっていて新雪をラッセルするのも楽しい。赤松林になると風は静まった。幾分腹痛が気になる。三沢山下からは風がまた強くなった。雪は気にならない。三沢山はさっさと過ぎて北面白山を目指す。視界は20mくらいか。以前に山の師匠のSさんに教えて頂いた木の陰で小休止。和菓子が甘くて美味しかった。手袋を着けたところで携帯がなった。帽子を被っていて困った。ガサゴソ。かけ直すと良い知らせだった。さあ山頂へ。歩き始めるとすぐに雪面に亀裂が足元から10m以上前後に出来た。雪庇の上を歩いていた。危険は予期できなかった。君子危うきに近づかず、と思っていたが、何処に危険があるのかわからない。この世は危険な世と知り足り。腹痛はどこかに飛んでいった。エビの尻尾が見えるとワカンがゆるみ出した。気にせず、北の雪庇を注意して山肌をトラバース気味に歩くと踏み抜いた。抜け出して一歩前に出るとまた吹き抜いた。そうして雪庇にいざなわれる。視界も悪く緊張したら頂標が見えた。三角点に積もった雪も綺麗にして下山開始。自分のトレースがわからず右往左往。こんな時は頂きに戻って頂標と石碑を見比べその角度で帰路を探した。当然、コンパスも見た。自分がいる場所が分からなくなった。そして危険なところも分からない。今の日本のようだ。そんなことを思っていたら、左足の股関節の内側が痛くなった。歩き始めて5時間近く。日没まではまだまだだ。ゆっくり歩こう。赤松林からは自分のトレースもなくなっていた。ゲレンデには人影はなかった。作業員に駐車地点で会ったが声をかけても浮かない顔だった。雪は強くなっていた。 天空は一様に灰色だった。日差しの射さない雪面は輝く訳でもなくそれでも曇天と同じ色をして区別できない。ゲレンデの下から吹き上げる風で雪は大波のように林の方に打ち寄せて行く。その林はなだらかな尾根へと続き、次第に幹の色合いはミルクに溶け込むように霞んで見えた。 尾根を登るとコンパスで弧を描いたように雪がその稜線を覆い隠す。両脇に並ぶ木々の表面は氷の膜で覆われて まるで蝋人形のようだ。そんな雪の廊下は途中に横切る様に雪庇が出来ていて棚田の上を歩いている気分になる。その向こうは林になっているようだがわずかに出口が見えて向こう側の世界に導かれる。 出口を抜け出すと左側は林はまばらになって麓の牧場跡が雲間に見えて来た。雪が吹きだまったのか杉林がクリスマスツリーの様に小さく見えるのが楽しい。そんな杉の木が稜線の足下まで続いているが、近づくと雪の布団に搦めとられそうで遠巻きにした。 名前は知らないが凛として立っている若木が好きだ。その向こうには天気がよければ三角の大畑山が望める。暫し歩みを停めるがその山容は見えなかった。 その後は展望はなく、ただ雪面と霧氷の林が続いた。高度が増すにつれて枝は衣が厚くなり、とうとうそれは風上に伸びる甲羅になった。 天童高原から三沢山を経由して面白山に登るルートは自家用車を利用して登る厳冬期のコースとしてはおそらく唯一のコースだろう。そこで雪庇の崩落寸前のヒアリハットを経験した。三沢山を下ってすぐだった。亀裂の場所は夏道は外していなかったように思う。それは休憩場所に使われる木陰から数mも離れていなかったからだ。でも、庇からの吹きだまりの上を歩いていたかもしれないが、亀裂は地面に垂直の切れるわけではないから、夏道よりに斜めに亀裂が生じるとすれば、足の下が夏道だとしても滑落したかも知れない。反省点はやはり天候の悪さにもかかわらず、雪庇を遠巻きしなかったことだろう。多少踏み抜いても林の中をトラバースすべきだった。 |
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悪天候の中、お疲れ様でした。読んでいると恐怖感が伝わってきます。去年同じルートを登りましたが、三沢山で時間切れとなりました。一人ラッセルはかなり疲れましたね。 |
うるし 2015/02/17 01:22 |
うるしさん、こんばんは。 |
HITOIKI 2015/02/17 22:04 |
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